フロン排出抑制法概要
フロン排出抑制法
フロン排出抑制法の概要
主な経緯
・2002年「フロン回収・破壊法」施行。
・2006年改正:整備時の回収義務と工程管理表制度導入。
・2015年改正:それぞれの立場に対し役割が決められる「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」に
名称変更。
・2020年改正:機器管理者、解体・産廃・リサイクル業者の廃棄時の取組、直罰方式追加。
(第一種フロン類充填回収業者の業務内容向上)
・2022年8月追記:簡易点検について、常時監視システムでも可能となる。
各立場での取組概要
1.フロン製造メーカの取組み
① 製造・輸入等をするフロン類のGWP(地球温暖化係数)の低減.
② フロン類からの代替ガス製造のために必要な設備の整備、技術の向上等のフロン類の
使用の合理化への取組みが求められます。(法律9条-11条)
2.フロン使用機器メーカの取組み
排出の抑制が技術的に可能な製品を「指定製品」として指定します。
指定製品を製造・輸入等する事業者は、国が定める「指定製品の製造業者等の判断の基準となるべき事項」に従い、
① 指定製品に使用されるフロン類のGWPの低減
②製品の設計・製造等におけるフロン類の充填量の低減
③使用するフロン類などに関する表示の充実によるフロン類の使用の合理化への取組みが求められます。
(法律12条-15条)
補足:最新の指定製品目標値
キガリ規制2030年HFC生産量▲70% 2034年▲80% 2036年▲85%に達成に向け、毎年目標値の見直しが検討されます。
現在対象外の製品についても要件が整い次第、随時検討することとしています。
以下は令和6年3月22日公表の経済産業省・環境省の新たな指定製品の目標年度設定について」(案)👈を参考に
整理した表です。
※2036年GWP10程度を満足する冷媒としては自然冷媒若しくはHFOフロンやHFCを含まないHFOを主にした混合フロンに期待が持たれます。
但しR744(CO2)を除く候補冷媒はA3(強燃性)A2L(微燃性)であり安全性を担保する施工・サービス・保管等が重要になってきます。
詳しくは「(一社)日本冷凍空調工業会」ホームページから閲覧・入手が可能です。👉
3.第一種特定製品の管理者の取組み概略
①以下の「第一種特定製品の管理者の判断の基準」の遵守を通じて、使用時にフロン類の漏えい防止に取り組む。
・管理する第一種特定製品の設置環境・使用環境の維持保全
・全ての第一種特定製品を対象とした簡易点検の実施(3か月に1回以上)
2021年5月、JRAGL-17「業務用冷凍空調機器の常時監視によるフロン類の漏えい検知システムガイドライン」により
フロン類の遠隔監視を行う点検方法が簡易点検の1手方法として定義されました。(一社)日本冷凍空調工業会ホームページから閲覧・入手可能です。👉
・一定の第一種特定製品について、専門知識を有する者(冷媒フロン類取扱技術者)による定期点検の実施(下表参照)
※冷媒フロン類取扱技術者による必要な定期点検の頻度
製品の区分 | 圧縮機に使用の駆動原動機の定格出力 | 点検の頻度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
冷蔵機器及び冷凍機器 | 7.5kW以上の機器 ※別置型ショーケース、冷凍冷蔵ユニット 冷凍冷蔵用チリングユニット |
1年に一回以上 | ||||
エアコンディショナー | 50kW以上の機器 ※中央方式エアコン |
1年に一回以上 | ||||
7.5kW以上50kW未満の機器 ※大形店舗用エアコン、ビルマルチ用エアコン ガスヒートポンプエアコン |
3年に一回以上 | |||||
・漏えいや故障等が確認された場合の修理を行うまでのフロン類の充填の原則禁止
・点検・整備の記録作成・保存
②一定量以上フロン類を漏えいさせた者は、算定漏えい量等を事業を管轄する大臣に報告する。また、国はその算定漏えい量等を公表を行う。(1000CO²t/年)
③機器にフロン類を充填又は回収する必要がある場合、整備者は充填又は回収を「第一種フロン類充填回収業者」に委託し、整備者に対して、整備発注時に管理者名を確実に伝達しなければならない。
④機器の廃棄等を実施する者は、フロン類を直接「第一種フロン類充填回収業者」に引き渡すか、設備業者等に委託し「第一種フロン類充填回収業者」に引き渡す必要がある。また、その際、行程管理制度に従って、回収依頼書の交付等を行う。
4. 特定解体工事元請業者の取組み
解体工事前に第一種特定製品の設置の有無を確認し、特定解体工事発注者に書面を交付して説明を行う。
5. 第一種特定製品引取等実施者の取組み
廃棄等された第一種特定製品の引取り等を行おうとする場合、引取証明書の写し等によりフロン類が回収済みであることを確認する。
6.第一種フロン類充塡回収業者の取組み
①第一種特定製品へフロン類を充塡し、回収することを業する者は、「第一種フロン類充塡回収業者」として、都道府県の登録を受ける。
② 正当な理由が有る場合を除き、フロン類を引き取る義務がある。
③ 充填・回収・運搬に関する基準に従って、フロン類を充填・回収・運搬を行うこと。
④ 自ら再生する場合を除き、フロン類を再生業者または破壊業者に引渡すこと。(法律27条-49条)
⑤ フロン類の充填・回収の記録を行い(5年間保存)、毎年度都道府県知事に報告すること。
⑥ 再生業者、破壊業者から交付された「再生証明書・破壊証明書」は回付し、写しを3年間保存すること。
⑦ フロン類の回収等の費用に関する料金等については求めに応じて説明すること。
※第一種・二種別冷媒フロン類取扱技術者対象機器容量及び受講資格(3-①関連)
項目 | 第一種 冷媒フロン類取扱技術者 | 第二種 冷媒フロン類取扱技術者 | ||||
業務 | 点検 | 回収 | 充塡 | 点検 | 回収 | 充塡 |
対象 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
全ての機器 | 全ての機器 | 全ての機器 | 空調機:圧縮機電動機または動力源エンジンの定格出力25Kw以下の機器 | 全ての機器 | 空調機:圧縮機電動機または動力源エンジンの定格出力25Kw以下の機器 | |
冷凍冷蔵機器:圧縮機電動機又は動力源エンジンの定格出力15kW 以下の機器 | 冷凍冷蔵機器:圧縮機電動機又は動力源エンジンの定格出力15kW 以下の機器 | |||||
有効期間 | 5 年 (5 年毎に更新あり) | |||||
受講資格 | 業務用冷凍空調機器の保守サービスの実務経験を3 年以上有し 且つ、下記の視覚の一つ以上を保有していること | 1. 業務用冷凍空調機器の保守サービスの実務経験を3年以上有すること | ||||
2. 業務用冷凍空調機器の保守サービスの実務経験を1年以上有し、且つ、下記の資格の1つ以上を保有していること。 | ||||||
①高圧ガス製造保安責任者(冷凍機械) 一種・二種・三種 | ||||||
② 冷凍空気調和機器施工技能士 一級・二級 | ①冷媒回収推進・技術センター(RRC)が認定した冷媒回収技術者 | |||||
③冷凍空調技士 一種・二種 | ②フロン回収協議会等が実施する技術講習会合格者 | |||||
④冷凍空調施設工事保安管理者 A 区分・B 区分・C 区分 | ③ 高圧ガス製造保安責任者(冷凍機械) 一種・二種・三種 | |||||
⑤ その他上記資格者と同等以上の知見を有する者(A~E) | ④ 冷凍空気調和機器施工技能士 一級・二級 | |||||
A. 高圧ガス保安協会認定の冷凍装置検査員(旧) | ⑤冷凍空調技士 一種・二種 | |||||
B. 冷凍空調工事保安管理者に係る保安講習修了者 | ⑥冷凍空調施設工事保安管理者 A 区分・B 区分・C 区分 | |||||
C. 高圧ガス製造保安責任者(甲種化学又は機械、乙種化学又は機械、丙種化学)かつ業務用冷凍空調機器の製造・品質管理業務に5年以上従事した者 | ⑦技術士(機械部門・衛生工学部門) | |||||
D. 高圧ガス製造保安責任者(冷凍機械一種・二種・三種)試験合格者 | ⑧自動車電気装置整備士(ただし書きあり、別途要確認) | |||||
E. 冷凍空調技士(一種・二種)試験合格者 | ⑨その他上記③から⑥の資格者と同等以上の知見を有する者(第一種の⑤と同様) |
7.破壊・再生業者の取組み
① フロン類の再生業又は破壊業を行おうとする者は、国(環境大臣及び経済産業大臣)の許可を受ける必要がある。
② 破壊基準または再生基準に従ってフロン類を処理すること。(法律50条-62条(再生)、法律63条-73条(破壊))
③ フロン類を破壊・再生した時は、「再生証明書・破壊証明書」を交付し、写しを3年間保存すること。
④ 再生業者は、再生されないフロン類は破壊業者に引渡すこと。
⑤ フロン類の再生量・破壊量は記録し(5年間保存)、毎年度国に報告すること。
8.廃棄物・リサイクル業者
① 第一種特定製品廃棄等実施者から引き取った製品を部品等としてリサイクルするか又は処分する場合に は第一種特定製品引取等実施者となり、フロン類の回収が確認できない機器の引取りは違法となる。
9.【重要】罰則一覧
環境省フロン排出抑制法ポータブルサイト「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」
参考
フロン排出抑制法に基づく立ち入り検査状況(環境省発表データより)
H24年度 | H25年度 | H26年度 | H27年度 | H28年度 | H29年度 | H30年度 | R元年度 | R2年度 | R3年度 |
1,620 | 1,271 | 1,079 | 1,911 | 2,718 | 2,379 | 2,692 | 2,773 | 3,313 | 2,378 |
〇フロン排出抑制法摘発事案
事案概要① |
被疑者 A(自動車販売会社 社員) は、被疑法人甲(自動車販売会社)の業務に関して、令和3年2月6日頃から同年3月8日頃までの間、第一種特定製品であるエアコンディショナーに冷媒として充填されているフロン類の第一種フロン類に関して、充填回収業者への引き渡しを他の者に委託する際に、法令で定める事項を記載した委託確認書を交付しなかったもの。 |
罰条等 |
•罰条:同法第43条第2項(第一種特定製品廃棄等実施者による書面の交付等) •罰則:同法第105条第2号(30万円以下の罰金) •両罰:同法第108条(30万円以下の罰金) |
事案概要② |
被疑者 B・C(解体業者役員・社員) は、被疑法人乙(解体業者)の業務に関して、令和3年3月5日頃から同月8日頃までの間、東京都八王子市大和田町2丁目16番24号に所在する営業所の解体工事に関して、第一種特定製品であるエアコンディショナーに冷媒として充填されているフロン類の第一種フロン類を、大気中にみだりに放出したもの。 |
罰条等 |
•罰条:同法第86条(フロン類の放出の禁止) •罰則:同法第103条第13号(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金) •両罰:同法第108条(50万円以下の罰金) •刑法第60条(共同正犯) |
新型コロナウイルスよる規制が緩和される中、今後立入検査は増加していくと思われます。違反行為は即刑事罰となる事を十分に認識し、各企業・各自は責任を持ち、確実な作業と処理が求められます。
10.補足資料
★フロン排出抑制法に関する運用の手引き 概要について
・充塡回収業者・引渡受託者・解体工事元請業者・ 引取等実施者等に関する運用の手引き
フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律👉(令和3年環境省・経済産業省)
フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律👉(令和3年環境省・経済産業省)r03_tebiki_kanri_rev3.pdf (env.go.jp)
・環境省2023年フロン排出抑制法パンフレット(全15ページ)
フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)id16.indd (env.go.jp)
★ 静岡県における「第一種フロン類充填回収業者登録」については下記から確認できます。
静岡県くらし・環境部環境局環境政策課👉フロン排出抑制法に基づくフロン類充填回収業者の登録等について|静岡県公式ホームページ (pref.shizuoka.jp)